日本の武道・芸道(茶道、華道、能楽など)における修行の三段階を示す言葉。
「守=型を守る」「破=型を破る」「離=型から離れる」というプロセスを経て、学びや技術が昇華することを意味する。
- 守(しゅ)
・意味:師や流派から伝えられた型・教えを忠実に守る段階。
・理論的背景:
人間の学習は「模倣」から始まる。模倣によって基本動作・思考のパターンが身体化される。
心理学的には「認知段階」にあたり、正解をトレースすることで誤りを減らし、効率的な学習を実現する。
・目的:基礎の定着、再現性の獲得。
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- 破(は)
・意味:型を部分的に破り、自分なりの工夫や改良を加える段階。
・理論的背景:
学習の進展は「創造的逸脱(creative deviation)」によって起こる。
既存のルールを意識的に外すことで、原理の理解が深まり、個別の状況に応じた柔軟な対応が可能になる。
これは「練習段階」や「適応的専門性(adaptive expertise)」に相当。
・目的:基礎を土台に応用力を獲得。
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- 離(り)
・意味:型から完全に離れ、自由自在に表現・実践できる段階。
・理論的背景:
長期的な練習で技能が「自動化」され、無意識的に高度なパフォーマンスができる状態。
この段階では、学びの対象を超えて独自の流儀や境地を創造する。
心理学的には「自律的熟達(autonomous mastery)」の状態。
・目的:独創性の発揮、普遍化・体系化。
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- 守破離の論理構造
守破離は単なる三段階ではなく「螺旋的成長」のモデルである。
・守=模倣(他者依存)
・破=批判的探求(相互作用)
・離=独創(自立)
そして「離」に至った者も、次の段階では再び新しい「守」に入る。
つまり「守→破→離」は一巡で終わらず、循環的に繰り返される学習構造。
守破離の三進化論的な説明
- 守=型を守る段階
理解するためにまずは徹底的に真似る。
→「理解」のフェーズ。 - 破=型を破る段階
自分なりに工夫したり、誤解したりしながらズレを経験する。
→「誤解」のフェーズ。失敗や逸脱を通じて本質を掴む。 - 離=型から離れる段階
守と破の両方を統合し、自在に扱えるようになる。
→「和解」のフェーズ。独自性と普遍性が調和する。
例:
- 守→破→離
理解→誤解→和解 - 守→破→離
資金→資産→財産 - 守→破→離
体験→経験値→経験 - 守→破→離
知識→知恵→智慧 - 守→破→離
模倣→工夫→創造 - 守→破→離
規律→応用→自在 - 守→破→離
弟子→独立→師匠 - 守→破→離
型→変化→無形 - 守→破→離
従属→挑戦→自立 - 守→破→離
学習→実践→悟り